佐藤生弁護士のコラム

2021.11.01更新

 交通事故により怪我をされ通院を続けていると、保険会社からそろそろ症状固定にしてもよいのではないか、などと言われる場合があります。でも症状固定とはどのような状態のことを言うのでしょうか?

● 症状固定とは、これ以上治療を継続しても治療の効果を期待でない、症状回復や改善が見込めない状態を言います。

  そして、この症状固定の時期が損害賠償において重要な基準点となります。
  つまり、症状固定以前は治療費・入通院費・入通院雑費・休業損害さらに入通院慰謝料が賠償の対象となるのに対して、症状固定以後は後遺症が残れば後遺症に基づく逸失利益と後遺症慰謝料が賠償の対象となりますが、症状固定後に通院を続けてもその通院費用や通院のための休業損害等は賠償の対象にならなくなります。
  したがって、症状固定とするかどうかは交通事故の損害賠償においては大変重要なことになります。

 

 それでは、症状固定は誰が判断するのでしょうか?

● 症状固定は、医師もしくは裁判所が決めます。

  通院を続けていると保険会社かそろそろ症状固定ですので治療費は打ち切ります、と言ってくることがあります。
  しかし、症状固定を決めるのは、担当の医師です。被害者の様子をみながら、また被害者と相談しながら医師が決めます。
ですので、もし、保険会社から先のようなことを言われても、担当の医師がまだ症状固定の状態ではない(治療の必要性がある)、とおっしゃられたならば通院して治療を受け続けてください。

  ただし、次の場合には裁判所が決定します。
  医師がまだ症状固定の状態ではないと判断しても、保険会社が症状固定に至ったと判断し、治療費の打ち切りを決める場合があります。その場合、どうしても保険会社が治療費を支払わない場合には、訴訟にって未払の治療費を請求することになります。その場合には、裁判所が、最終的に症状固定時期を判断することになります。この際、裁判所は、医療記録や医師の診断書、意見書などを証拠とし、これらを参考にして決めますが、医師の意見に拘束されることはありません。

 

投稿者: 池袋若葉法律事務所